和魂〈ニギミタマ〉

 

これは天羅万象・零を用いて行った『和魂〈ニギミタマ〉』というシナリオのシナリオフックです。
シナリオメモを書き起こしただけなので、ちゃんとしたシナリオ形式にはなっていません。
実際にシナリオとして用いる際には、かなり手を入れる必要があると思います。
データセクション、無いし。
しかもコレ、天羅でプレイするシナリオじゃないっす。
どっちかというとSF?みたいな。

 

〈概要〉
神宮家の奥深くに作られた巨大な水槽に浮かぶヒト、オニ、そして鬼呼び。意識を操作された彼らの虚ろな瞳に輝きは無い。「天羅が滅びの道を歩むのを止めるにはヒトをオニ化する他に手はない」と銀髪碧眼の少女は語る。
注:このシナリオの中で語られる『ヒトとオニの違い、およびヒトをオニ化/オニをヒト化する技術』『鬼呼びの正体』『和魂という、意識を支配する明鏡』『間空仁堂の乱に関する真実』『国家間の争いに関して、神宮家が武力による解決を推奨している理由』『マリア・マグダレーナの理想』等の設定はxiiの勝手な解釈であり、どっちかというと妄想に近いものであり、天羅万象および天羅万象・零の公式な設定であろうハズもなく、このシナリオフックをシナリオに書き起こす努力までして実際にセッションを行って非難囂々だったとしても(というか非難囂々だろうな、多分)、責任は負いません

 

〈背景〉
マリア・マグダレーナは、自らの星の滅びにより天羅/テラに移民してきた最初の神宮家/貴族の一人である。彼女は天羅/テラの未来を憂い、現在のままの文明の発展速度ではあと数百年〜数千年で天羅/テラは滅ぶと予測した。星の滅びに立ち会う悲しみを知っている彼女は、天羅/テラに生きる全てのヒトをオニ化して彼女らが移民する前の姿に戻し、自然のままにゆっくりと暮らすことで滅びを免れようとしていた。ヒトをオニ化するため、またオニをヒト化するための研究は、すでに最終段階を迎えつつあった。
注:もし比較的天羅っぽいセッションを楽しみたい場合は、マリア・マグダレーナは使わないほうが無難です。キじるしの陰陽師等をご用意下さい。

 

 

〈アーキタイプ〉

巫女:
神宮家の巫女として〔和魂〕という明鏡の制作に関与したが、計画に関わる部分の記憶を封印されている。ときおり記憶の断片がフラッシュバック
(注1)する。

オニ:
神宮家のラボで生まれたオニの子供が、神宮家の手により気まぐれに連れ出され、ヒトの社会で育てられた。遠くより呼ぶ声を聞き、再び神宮家を目指す。

鬼呼び:
心珠を受け入れるため、ヒトとオニの両方の環境をとれるように式で調整された存在。自らが何を目的として生み出されたのかを、まだ知らない。

シノビ:
心なき刃と化してオニの村を襲い、心珠や幼い命を神宮家に送っていた日々。いつしかその刃は心を取り戻し、自らの過去と立ち向かう。

 

-零幕-

《疑惑》(巫女)
神宮家入りが決まった『巫女』は、とある社で上司となる銀髪碧眼の巫女と出会う。「夜の聖母」と呼ばれる巫女
(注2)から渡された明鏡に接合し、意識を失う『巫女』。再び意識を取り戻した時、既に2年の時間が過ぎ去っていた。思い出せない空白の時間への疑問と神宮家への忠誠の間で揺れる。
宿命:『封印記憶』(上級)

《遠き声》(オニ)
幼少の『オニ』を抱いて村に連れてきたのは、一人のオニだった。幼い頃の記憶が無い『オニ』。ただ育ての親からは愛情を受けながらも、その影ではヒトからひどい迫害を受けていた。間空仁堂の乱の前に、ヒトとオニが共存できる国の建国という理想を間空仁堂から聞いても、どこか絵空事のように感じていた。
そんなある日、自らの出自に疑問を抱く『オニ』はアルによる呼びかけを受ける。「逃げろ、北へ、『オニ』よ・・・」と弱く叫ぶその声は、懐かしい響きをもって『オニ』の心に響いた。優しくしてくるヒトとのシガラミを捨てきれず、今でも『オニ』は逃げられないでいる。
宿命:『声の正体を知る』(初級)

《うたかた》(鬼呼び)
『鬼呼び』に戯れで式を打った陰陽師に、自らの手で引導を渡した。しかし自らが何のために式を打たれ、鬼呼びと呼ばれる存在となったのかは分からなかった。生きてきた目的を果たしたあとの虚無感を感じながら眠る『鬼呼び』の夢に、再び例の陰陽師が何人もの鬼呼びを従えて現れる。「思い出せ『鬼呼び』、お前が何のために作られたのかを・・・」。
夢から覚めてもその声は『鬼呼び』の耳に響く「思い出せ『鬼呼び』、お前が何のために作られたのかを・・・」。
宿命:『自らの存在理由を知る』(初級)

《心》(シノビ)
『シノビ』の里に銀髪碧眼の少女
(注3)が現れ、統領に面会したいという。二人の会話は奇妙なものだった。
「鬼哭のオニが乱を起こしそうなの。ヒノカグヅチはくれてやるつもりだけど、浮橋を落とされるとちょっと痛いわね。
・・・。
とりあえず、至急検体が欲しいのよ。なんとかお願いできないかしら。」
密談を終えた統領は『シノビ』たちにオニの村を襲い、幼いオニを捕らえよとの命を下す。やむを得ず『シノビ』だったが、どこかやりきれない気持ちがあった。恐怖に怯えるオニの瞳を刃越しに見た『シノビ』は、自らの心のあるように生きることを決意して里を抜ける。
宿命:『オニへの同情』(初級)

 

次幕予告
蓮見、千早、大館の三国を巻き込んだ戦も終局を迎えつつあった。
血で血を洗い、国が滅ぶのも天羅の常。
例えそれがたった4人が原因であったとしても。
黒衣の陰陽師は語る。「あなた方を神宮家にお招きいたします」
天羅万象・零『和魂』、次幕『命の代償』。

 

-第一幕 『命の代償』-

第一場
『オニ』や『鬼呼び』が住まう村が、神宮家製のヨロイとそれに乗った陰陽師(『鬼呼び』に式を打ったヤツに化けた、『シノビ』と同僚のクサ
(注4))の攻撃を受ける。
彼らは『オニ』や『鬼呼び』を呼び出し、神宮家から招聘されていることを告げる。従わない場合は村に龍砲を打ち込むなどの攻撃を加える。
従うか、ヨロイが退けられるまで続く。
倒した場合、陰陽師に化けたクサやヨロイ乗りが機面鏡につながった鉢金をしていることに気付く。また機面鏡には〔和魂〕と彫られていることを知る。

第二場
『シノビ』や『巫女』が逗留している城に、神宮家からの使いとして金剛機を従えた人形使いと陰陽師(『鬼呼び』に式を打ったヤツに化けた、『シノビ』と同僚のクサ)がやって来る。
彼らは『シノビ』や『巫女』を呼び出し、神宮家から招聘されていることを告げる。従わない場合は城を落とすことを警告する。それでも従わない場合はアマツミカボシを使って城を消滅させる。
焦土と化した城跡に陰陽師の笑い声が響く。
もし何らかの手段で彼らを倒した場合、陰陽師に化けたクサや人形使いが機面鏡につながった鉢金をしていることに気付く。また機面鏡には〔和魂〕と彫られていることを知る。
大人しく従った場合は、神宮家への案内をする、かも。

テキトーに第一場と第二場を切って第一幕とする。
 ↑この辺が作りが甘かった部分なんだろうなー。動機が薄くなるし。

 

次幕予告
かつて一人の鬼法師は語った。オニとヒトが共に暮らせる国を作る、と。
彼はまだ知らない、オニの国の意味を。
彼女はまだ知らない、過去の自分が為したことを。
彼女はまだ知らない、自分が生み出された意味を。
彼女はまだ知らない、自分が果たす役割を。
天羅万象・零『和魂』、次幕『人形』。

 

-第二幕 『人形』-

焦土と化した国で、民が暮らしを立て直すのにしばらく手を貸したPCたち。
事件から2ヶ月後、PCが神宮家に忍び込んだ場面から始まる。

神宮家の奥深くにしつらえられた、「夜の聖母」ことマリア・マルガレーナの研究室の周りは静寂に包まれていた。
PCが扉を開くと、そこには巨大な水槽と棺桶のように横たえられた幾つもの水槽、そして多数の機面鏡とそれらに接続されたロウバンを叩くマリアの姿がある
(注5)
マリアの側には一体の金剛機が控えている。この金剛機は、マリアの理想に共感して自らの魂を明鏡に封じたマリアの側近である。(いきなり戦闘になるようなら金剛機が割り込んでマリアを守る)。

水槽について。
1)鉢金を付けられ、意識を操作された何十人ものオニが浮かぶ水槽。アルを用いて意識を読もうとすると、同じ答えがエコーのように返ってくる
(注6)
2)鉢金を付けられ、意識を操作された何十人ものヒトの子供が浮かぶ水槽。良く観察すると、額に小さな膨らみが出来ていることに気付く。
3)式を打たれ、胸に縫合痕のある大人のヒト。識別ナンバーが付けられた棺桶状の水槽に浮かんでいる。

マリアからの解説。

その1:オニとヒトの違いについて。
●オニはアルの力により、意識をある程度共有することが出来る。しかしヒトにはそのような力は無い。これがオニとヒトとの根本的な違いである。
ならばヒトの意識を結合することで、擬似的にアルを持ったヒトのような状態を作り出すことが出来れば、ヒトもオニと大差無くなるのではないか。この仮説を実証するためには意識を結合させるための道具が必要になる。
この「意識をリンクさせる」という目的のために作り出されたのが〔和魂〕という明鏡/機面鏡のシステムであり、この開発に携わったのが『巫女』である。
●逆に、オニに国を作らせて身分不相応の文明技術を与えてしまえばオニはヒト化するのではないか。この仮説を実証するために起こしたのが間空仁堂の乱であり、その過程でヒノカグヅチを与えたのである。
オニの国である鬼告が建国されたことで、仮説通りにオニがヒト化の道を辿るかどうかは現在追跡調査中。

その2:PCが果たす役割について。
●『巫女』は、オニやヒトの意識を操作するための〔和魂〕の開発において中心的な役割を果たした。『巫女』がいなければこの研究の完成は無かったと誉める。
●『オニ』は水槽で眠るオニから生まれた子供であったが、神宮家の人間の戯れにより外界に持ち出された。帰ってきてくれたことに深く感謝をする。
●『鬼呼び』は、心珠を受け入れるための体内環境を式で整えられた検体の一人であり、最も良く調整された者である。帰ってきてくれたことに深く感謝をする。
●『シノビ』は、この研究のために必要な検体(オニやヒト)の調達に働いていた。

その3:ヒトをオニ化させる必要性について。
「あなた達に、天羅についての真実を少し教えましょう」と言って、マリアは通路を奥へと歩いていく。
PCがついてくるのを特に待つことはない。が、少し時間が経つと床が振動を始める。

次幕予告
天羅にとってのアマテラスを追って、アマノイワトを開いた。
果たしてそこにあった『希望』とは。
夜の聖母と呼ばれた少女は語る。
「人は分かり合わなければいけない、この星のために。」
天羅万象・零『和魂』、最終幕『希望』。

 

-最終幕 『希望』-

マリアが辿った通路を奥へと進むPC。
そこは暗黒の空間だった。
部屋の奥に佇むマリアの背後から光が差し、暗黒の中に青く美しい半球-天羅/テラと呼ばれる星-が浮かび上がってくる。
「この美しい星が、あなた方が天羅と呼ぶ世界の正体。といってもあなた方にはまだ理解できないでしょうけど・・・」

マリアからの解説。

ヒトをオニ化させる必要性について。
●そもそも神宮家の人間やテラの貴族(マリア含む)は、他の星の滅びの前に脱出し、天羅/テラへ移民してきた人種の生き残りである。
彼らが移民する前の天羅/テラはオニ/オウガと呼ばれる先住民族しか住まない星であった。
●現在のヒトの文明の発展速度では、数百年から数千年後には天羅も滅びを迎えるだろう。現在の神宮家が、国家間の争いの解決法として武力の行使を認めているのは、余計な方向への文明の発展を防ぐためである。平和が訪れることで文明が必要以上に発展するのを妨げるため、国家間で争わせて国力を消耗させているのである。
●たとえ数百年、数千年かかるとしても天羅が滅びの道を歩むのは確実であり、今の内に何らかの手を打つ必要がある。

以上を語った上で、
「私達は天羅を滅びから守らなければならない。
そのために、人は分かり合わなければならない。
私はこの星が私がかつて見たあの星のように滅ぶ様を見るのは嫌なのです」
「私は自分の理想に取り憑かれた修羅です。しかし今、私が語ったことは真実。
現世のしがらみを重んじて天羅の未来を捨てるか、滅びを免れるために私にその体を与えるか、選びなさい」
と告げ、決裂の場合は戦闘に。
マリアは修羅なので、説得することは出来ない。あまりPCが説得にこだわるようなら、マリア側から戦闘を始めると良い。と思う。
マリアを倒すか、研究の人身御供となると終幕となる。

 

-エンディング-

各PC毎に、今回の事件のあとどうするかを訊ね、演出して終わる。

最後に、PCの知らないどこかくらい部屋で一体の金剛機が機面鏡に接続されたロウバンを叩いているシーンを見せる。
「報告第490272-1214号。和魂計画は概ね予定通りに進行中。第2段階に移行する」
と打ち込み、明鏡ネットワークに流しているシーンを最後にセッションを終える。

 

注1:
『明鏡に接続している自分』『虚ろな瞳で見返してくる、鉢金をつけたヒトたち』『水槽に入れられた、式を打たれたサムライのようなヒト』『巨大な水槽に浮かぶ、何十人ものオニ』等をフラッシュバックしで見せると良いかも。


注2:
マリア・マルガレーナ(Terra: the GUNSLINGER参照)のことである。最終幕でマリアが倒されてしまうのもアレだなと思い、マリアの理念を複製し明鏡に封じてある金剛機という設定でセッションを行った。

注3:
これももちろん、マリア・マルガレーナのことである。シノビの頭領は南朝の土蜘蛛を想定した。密談の内容から、神宮家からみの依頼であることを推測させる。

注4:
百面蟲と九管蟲を併用して陰陽師になりすましている。陰陽術は使えない。

注5:
水槽に実験体を浮かばせて、自分は部屋の片隅でデータを取っているという状況。綾波のクローンが浮いている部屋のイメージでシナリオを書いた。

注6:
アルを使うと、水槽に浮かぶオニ全員がいっせいにアルを使ったオニの方を向く。これも綾波にシンジが話しかけたときのイメージで描写した。ちょっとキモい感じ。

 

 

 UnpluggedRPG

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-ワタシはこうしてこのシナリオを作ったの巻-

このシナリオは天羅万象オフィシャルページのBBSで随分と昔に話されていた、オニ牧場の話が原型となっている。
「オニの牧場を作って、心珠とりまくってウッハウハ」という話である。
その話の中で「牧場で飼育されたらオニも黙っていないだろー」って話があって、だったら意識を制御できるものを付ければいーじゃん、とワタシは思ったわけだ。
で、修羅の魂を明鏡に封じてある金剛機が何かの拍子に自分の記憶を取り戻すのは、実は記憶を操作しているプログラムのエラーである、とか考えていた話と結びついて、〔和魂〕という「意識を操作できる明鏡」が生まれた。ゲーマーズフィールド掲載のリプレイにも良く似たのが出ている。
ちなみに和魂〈にぎみたま〉というのは、「ソウルハッカーズにおいて悪魔の能力値を上昇させるために悪魔合体に用いる御魂の一種 事に臨んで魂が荒ぶる状態ではなく、魂の穏やかな状態」という程度の意味にワタシはとらえている。

オニとヒトとの違いについては、天羅・零の冒頭に井上純弌氏が書かれた「何故オニは滅びゆく種族なのか」に由来している。
オニはアルによってお互いを理解出来すぎるために個人という概念が乏しく、物語にならない(そんな感じだったと思う)というアレである。
だったらヒトも意識を繋げたらオニみたいになるんか?という疑問から、〔和魂〕を使って精神を結合させてやろーという発想になった。
で、ヒトをオニ化させるというシナリオを作ろうと思うようになったワケだ。
それ以前から人工のオニが神宮家で作られていたワケだし(苦是集のローグのことね)、この辺で理論立てて量産に踏み切ってもよかろ?みたいな。

間空仁堂の乱において神宮家はヒノカグヅチをオニに取られたと書いてあるが、実は与えたんちゃうん、とずーっと思っていた。
この乱の裏側でも神宮家は何かしていたハズだ。南北朝に分かれたのにも何か理由があるハズだ。
そんな思いが「オニをヒト化させる」話になった。

この辺の話を全部ごちゃ混ぜにして、偉そうなヤツを出して「ヒトをオニ化しないとダメなのじゃー」と言ってしまうというのはどうだろう?というのが今回のシナリオ。
「人は分かり合える」が天羅・零のテーマなので、それにちなんで「人は分かり合わなければいけないの、この星のために」とか言わせてみた。

セッション開始3時間前までは、オニの意識を支配して牧場で飼育している状態にして心珠取りまくってヤマトタケル/ヒノカグヅチ級の戦艦を飛ばして神宮家あーんど貴族がまた宇宙に旅立っていくのが目的、というシナリオだった事はヒミツだ。
設定全体が、ビミョーにAngel・Coreっぽいのもヒミツ。

最後に、拙いシナリオなのに一緒に卓を囲んでくれたメンバーの皆さんに感謝。
イヤ、なんとなく面と向かって言うのが恥ずかしかったので、こんなところに書いてみたり。

011024
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